春夏秋冬叢書 発行物「花見頃」


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[花見頃]

三遠南信の花見処と花の解説に加え、
当地ゆかりの各界の方々から寄せられた
花への思いを綴ったエッセイにより構成。

全224ページ。カラー84ページ。写真点数207点の豪華版。

発売中

編者/味岡伸太郎
写真監修/山本宏務
花の解説監修/高柳久和
B6版(186×128mm)
ハードカバー
定価 3,000円(税別)
ISBN4-901835-00-9 C0326

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編集方針

春夏秋冬叢書の出版物は
難読語及び地名・氏名・植物名その他専門用語・方言等には
可能な限りルビを付けるという方針で執筆している。

花名は、和名漢字表記とし、ひらがなにてルビを付けた。
この表記法は必ずしも現行で一般的なカタカナ表記とは馴染まないが、
漢字表記によって花の印象を頭の中に描くことができる上、
花見には「サクラ」を見るのではなく
「桜」を見て頂きたいという、編集部の願いからである。


主な内容

春の花/夏の花/秋冬の花/湿原の花/痩せ地の花/花畑の花/花のある施設
花のある散歩道花の地図帖/索引/エッセイ―それぞれの花



(3〜5月)


桜、梅、満作、福寿草、節分草、幣拳、椿、片栗、猩々袴
木蓮、辛夷、菜の花、這金鳳花、藤、躑躅、栃の木、蜜柑


桜-抜粋-
「桜前線」いかにも春の訪れにふさわしい言葉である。暖かい九州や四国から始まる染井吉野の開花宣言とともに、日々、北上する様子が伝えられる。東海地方の平野部では、開花が年度始めと重なり、入園、入学、入社など人生の節目になっている。桜は、バラ科の落葉高木で、日本の春を代表する花である、一月には沖縄で寒緋桜が咲き始め、二月には東京・新宿御苑で咲く。そして五月中旬には最も遅い桜、千島桜が北方領土の桜として北海道で咲く。
 桜は農作業開始を告げる花で、農家では本格的な農作業開始の時期を迎える。桜の「さ」は、田神の「さ」で、穀霊の意を表す。「くら」は神の憑りつく所の意のくら(座)で、さくらは穀霊の憑りつく神座の意であるという。<中略>日本人の桜観が大きく変わるのは、徳川時代である。歌舞伎「仮名手本忠臣蔵『判官切腹』」(一七四八)の場で、「花は桜木、人は武士」の台詞で散る桜は、やがて、幕末の志士たちが、「散り際の美学」として桜を「散る我が生命」に例えた。<中略>全国各地には無数と言っていいほど桜の名所がある。桜の花の下には春を待ちわびた人々で溢れている。しかし「花より団子」のごとく、桜にかこつけた宴会も多く、早朝からの陣取り、カラオケや宴会部長といわれる人達の品のない隠し芸、紙コップに注いだ酒、紙皿に盛り付けた焼き肉などは風情がない。粗末なライトアップで浮かび上がるのは人、人、人とゴミの山。そこには万葉の美学も散り際の美学も桜守の愛も感じられない。





(6〜8月)



牡丹、細葉石楠花、花菖蒲、杜若、紫陽花、山紫陽花、笹百合、山百合、百日紅、向日葵、浜昼顔、弘法麦、浜豌豆、浜大根、白茅、浜木綿、浜朴

紫陽花寺の伝説・花盗人-抜粋-
『その昔、形原町が「かたのはら村」と呼ばれていた頃、一人の娘が人目をはばかるように、両手いっぱいに紫陽花の花を抱え、夜道を歩いていたそうな。家に戻った娘は、ほっとため息をつき、紫陽花の花を玄関の引き戸の上に飾り付けた。「さあ、これで今年も災難に遭わず、お金にも不自由せずに済むことだわ」とつぶやいて、年に一度の盗みを仏様にあやまったそうな。』
 これは形原の町に古くから伝わる俗信で、人に見つからず、他人の家の紫陽花を盗ってきて玄関に吊すと、お金が貯まり、厄除けになるという。お互いに他人の紫陽花を盗み合ったために、見かねた補陀寺の住職が「寺に紫陽花を植えておいてあげよう」と境内に植えておいたという。今もこの風習は形原町の一部に残っているという。



(9〜11月)


萩、桔梗、秋海棠、彼岸花、コスモス、松虫草、鳥兜、龍胆


彼岸花-抜粋-
彼岸花は毎年同じ場所に、秋の彼岸の頃に、花暦通りに咲く。田圃の畦道や屋敷回りに咲き、曼珠沙華をはじめ、色々な別称をもつ。原産地は中国で、縄文晩期に稲作農耕文化とともに渡来したといわれ、球根は有毒だが灰汁抜きをすると澱粉がとれ、食料の足しにしたと推定されている。花は咲くが種子が出来ず、株分かれで繁殖する。葉は花が終わると発芽し、晩春を過ぎると枯れ、球根で夏を越す。



湿原の花


湿原とその周辺には、他の環境では見られない特徴ある植物が数多く生育している。寒冷地の湿原には水芭蕉や綿菅、温暖地では白玉星草や鷺草、共通な種として毛氈苔や沢桔梗などが知られている。

谷地柳、白玉星草、三河梅けい草、幣拳、作手真薊、山どり薇、鷺菅、長穂の赤吾亦紅、春龍胆、桜葉榛の木、三日月草、アンペライ、猩々袴、野花菖蒲、小鬼百合、毛氈苔、耳掻草、長穂の石持草、糊空木、水菊、未草、水擬宝珠、大葉擬宝珠、沢桔梗、岩菖蒲、沢鵯、水蘭、梅鉢草、



痩せ地の花


蛇紋岩が露出した蛇紋岩地帯は、表土が浅く岩石が露出しているため、土質が痩せている。その上、蛇紋岩の化学成分から植物は成長が悪く、葉が細く、花が小さくなり、葉の表面がつやつやする。全域にわたって赤松の樹高は10メートル以下で、ところによっては2〜3メートルの丈の低い疎林になっている。基岩の風化や植林などによって植生は異なり、海岸近くでは黒松の疎らな林のところもある。-抜粋-

広葉燈台躑躅、有菅、白糸草、紫千振、紫蘭、下野、河原撫子、照葉野薔薇、渋川躑躅、白花風車、松虫草、女郎花、



花畑の花
花の生産日本一、電照菊栽培、露地栽培



花のある施設


サンテパルク田原、伊良湖フラワーパーク、つくでラベンダーガーデン、浜松市フラワーパーク、豊橋総合動植物公園



花のある散歩道12選


新城桜淵、健康の道/神野新田海岸の浜朴/石巻山/御津山の桜・松沢寺の山桜/宮路山の小油躑躅/音羽川の桜/新城市川路から市川/阿寺の七滝/東栄町/茶臼山山麓、川宇蓮の桜と花の木/浜松市神座の常磐満作/田原町の桜







エッセイ―それぞれの花
「アルキビアデスと花」豊橋技術科学大学教授・山本淳
「イギリスの桜」愛知大学文学部教授・藤田佳久
「咲麗」関谷醸造株式会社・伊藤直子
「鏡に写る花」書家・福瀬餓鬼
「小さい白い花」庭園デザイナー・糟谷護
「草の花」俳人・星野昌彦
「一面の菜の花。そこにたたずむ女が一人」愛知県県議会議員・かしわぐま光代
「春は名のみ」ネイチャーエッセイスト・渥美守久
「大千瀬川の岩躑躅」元豊橋市教育長・古山保夫
「花に寄せる想い」茶道家・竹下信子
「すゞらんの花」画家・水藤澄子
「笹百合の頃」ネイチャーエッセイスト・渥美守久
「野菜の花たち」陶芸家・園阿莉
「烏瓜の花」ネイチャーエッセイスト・渥美守久
「あざみの花」鳳来町商工会会長・片桐幸信
「私の好きな花」創画会会員・高畑郁子
「モネと睡蓮」美術家・味岡伸太郎
「駒草との出会い」写真愛好家・櫻井祐輔
「先輩と鷺草」登山家・峯野元孝
「藍の花と華」染色家・原田弘子
「花の面影」画家・荻野佐和子
「道草」彫刻家・国島征二
「冬の朝顔」豊橋創造大学短大教授・藤本逸子
「100万本のバラ」NPO穂の国森づくりの会専務理事・穂積亮次