「三遠南信」という地域枠が注目されている。愛知県東三河、静岡県遠江、長野県南信を一体性のある地域としてとらえ、県境を越えた地域振興をめざそうとする動きが官民を問わず生まれ始めている。(中略)
いずれもかなりの距離があり、三遠南信は行政機能の末端の集まりであったといっても過言ではなかろう。すなわち、県境を挟んで「近くて遠い」地域となってしまったのである。(中略)このように、三遠南信においては、飯田線や国道各路線などが県境を越えて機能し、小さなものかもしれないが確実に地域的一体性を形成しているのである。飯田線を三遠南信地域づくりの核として位置付けられれば、さらにその役割は増していくものと考えられる。- 本文抜粋-
目次
小和田のこと
飯田線乗車記 下り
飯田線 雑記
飯田線乗車記 上り
沿線民俗探訪
年表
索引
小和田のこと
写真・山本典義/脚注・味岡伸太郎
飯田線には九十二の駅があるが、その多くが小さな無人駅である。中でも、中部天竜・天竜峡間の山岳区間には、付近に民家がほとんど存在しない「秘境駅」がいくつもあり、初めて飯田線に乗った旅行者などは「何故こんな何もないところに駅があるのか」と不思議そうな顔をする。
水窪から長い大原トンネルを貫いて大嵐に抜け、さらに天竜川沿いに小さなトンネルをいくつかくぐると、小和田に着く。…
下り
乗車記・山盛洋介/写真・山本典義/脚注・宮本真理子/脚注写真・山本宏務
飯田線は長い。とにかく長い。豊橋から辰野まで、実に一九五・七キロメートルにも及ぶローカル線である。しかも、駅が合計九十四もある。時刻表の路線図など、あまりの駅の多さに無理やり路線を湾曲させて描かれている。
これだけの駅があるから、全線を乗り通そうなどと考えると、ゆうに六時間以上を要する。朝、豊橋を出発しても、辰野に着く頃には既に夕暮れなのである…
飯田線 雑記
乗車記・山盛洋介/写真・山本典義/脚注・宮本真理子
三遠南信と飯田線
「三遠南信」という地域枠が注目されている。愛知県東三河、静岡県遠江、長野県南信を一体性のある地域としてとらえ、県境を越えた地域振興をめざそうとする動きが官民を問わず生まれ始めている。
もっとも、この三遠南信という地域枠は、決して新しいものではなく、歴史的にも豊川・天竜川の流域圏として交流が深かったとされている。
飯田線乗車記-上り
乗車記・山盛洋介/写真・山本典義/脚注・宮本真理子/脚注写真・山本宏務
私の旅はこの言葉から始まった。上諏訪の駅構内にある露天風呂でのんびりしていると、山登り風の男性からこう声をかけられたのである。聞いてみると彼は京都の大学教授で、休暇を取って八ヶ岳登山に来た帰りだという。すっかり話し込み、私は若干ノボセ気味になってしまったが、こうして旅先で見知らぬ人と話し込むことが、単調になりがちの毎日の暮らしの中ではとても新鮮なことである。…
沿線民俗探訪
文・宮本真理子/写真・山本宏務
飯田線の沿線は民俗芸能の宝庫である。なかでも天竜水系を中心とした三遠信の国境、奥三河・北遠・下伊那地域に残る芸能には、日本民俗学の樹立者、柳田國男や折口信夫など多くの学者が関心を寄せてきた。
|