春夏秋冬叢書 発行物「山頭火を歩く」


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[山頭火を歩く]



昭和14年4月から5月、山頭火はこの地を歩いた。
そして心にしみる句を残した。
撮影と取材は同じ季節に行われた。

発売中

文/味岡伸太郎
写真/山本昌男
装幀/味岡伸太郎
B6判(186×128mm)
本文264ページ、ハードカバー
定価 3,000円(税別)
ISBN4-901835-03-3 C0395

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漂泊の俳人、種田山頭火。一九三九年、愛知県知多半島から伊那まで十九日間の旅を追ったのが本書だ。美術家である著者は「門外漢」と言いつつ、山頭火が旅先で作った句を紹介し、同じ旅程をたどった。山頭火の旅はつらくはなかったとする。商売に失敗、妻子を捨てた山頭火はざんげを繰り返すが、それも長続きしなかった。偶像的ではない人間山頭火に迫る。〈『長野日報』4月23日〉


目次
はじめに/草木塔より/山頭火 その漂泊
井月を訪ねて/山頭火行程図


山頭火 その漂泊

種田山頭火。明治十五年十二月、山口県防府市の大地主の長男として生まれる。本名、種田正一。十一歳の時、父竹治郎が妾を同伴して旅行中、母フサが自宅の井戸に投身自殺。母の死後祖母ツルの手にて育てられる。明治三十七年、神経衰弱を理由に早大を中退。明治三十九年、正一、二十五歳の時、父が家政に失敗。隣村の酒造場を買い受け、正一名義にて酒造業を経営するが、文学と飲酒の日々を続け家業を怠り、二年連続して酒蔵の酒が腐敗し、種田家破産。父は他郷に走り、正一は明治四十二年に結婚した妻サキノと、翌年誕生した長男健と共に同好の士を頼り、熊本に落ち延びる。…









井月を訪ねて

四月十七日 曇

  逢うて菜の花わかれて菜の花ざかり
  いちめんの菜の花の花ざかりをゆく
  さくらちりかゝる旅とたつたよ
  旅もいつしかおたまじやくしが泳いでゐる
    途上

三月に山口を出立した山頭火は四月二日に広島へ、そして名古屋、刈谷をへて知多半島の河和に向かった。〈旅もいつしかおたまじやくしが泳いでゐる〉季節になっていた。…











五月四日 晴、若水居。

春、山国の春、高原の春、山の色、空の色、土の色、何も彼も春だ。
若水居のしたしさ、若水君その人のあらはれだ。
独活の粕漬うまいな、御幣餠(飯団子の田楽)はめずらしい。
                     
南信地方の木曽・伊那から三河、遠州の山間部では山の神に御幣餅を供える。餅の名ではあるが、粳の白米を少し硬目な水加減で炊く。粳と言うと分らない人が増えてしまったが、餅米に比較して、粘り気の少ない普通の米のことである。…