春夏秋冬叢書 発行物 三河の金次郎像全調査


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三河の金次郎像全調査
三浦 茂 著

148×210mm(A5判)/288頁
2022年10月10日発行予定
2,500円(消費税・振込手数料・送料別)


これほどまでに
金次郎像を追いかけた人はいない。

三河にあった二宮金次郎像、約350体。
金次郎に魅せられた著者「三浦茂」による
足掛け十年の現地調査。全金次郎像の写真と解説。

何故、これほどの金次郎像が作られたのか
二宮金次郎の成立と、その社会学。
像出現の社会的背景と、及ぼした影響。

チラシはこちら(PDF・328kb)
チラシをプリントアウトいただいて、FAXでのご注文も可能です。




目次

はじめに

私は長らく二宮金次郎に興味を持っていませんでした。小さいときに通った小学校には二宮金次郎の像があって、だれかに二宮金次郎の話を聞いたと思いますが、「昔の子供は大変だったんだな。」と思った程度でした。50歳くらいになって、明治初期に大工さんが日本の技術で建てた一見西洋風のモダンな学校が今でも残っているのを知り、古い校舎に興味を持って各地の洋風学校や県内の木造校舎を見学して回りました。ある山奥の廃校を訪れた時、放置された校舎はすでに崩れかかっていましたが、運動場の隅に二宮金次郎の像が一人でポツンと建っているのが印象に残りました。古い学校にはたいてい金次郎の像がありました。その後しばらくして、こんなにあちこちの学校で見かける金次郎の像の数は尋常ではない。いつ、だれが、なぜ建てたのか、という疑問がわいてきました。「自分は二宮金次郎について全く無知だった」と気付いて彼の伝記を読み、地元の小学校や神社を訪ねて現存する金次郎像の実態を調べてみました。自分の住む三河地域を悉皆調査して350余の金次郎像を見た結果、「県の半分でこの数なら、全県で、さらに日本全国では大変な数になる」と改めて驚きました。もっとも、愛知県は金次郎像がダントツに多い県なので単純計算はできません。「尋常小学校の数二万数千校の半分と考えても一万を下らない像があっただろう」という推計もあります。
 二宮金次郎(尊徳)の人物、業績、思想についてはすでに多くの研究があるのですが、「なぜこんなにたくさん子供時代の像が作られたのか」という私の疑問に答えるものはありませんでした。そこであれこれ原因を考え、調べてまとめたのが巻末の「二宮金次郎の社会学」です。金次郎本人の分析ではなく、多くの像が出現した社会的背景と彼が社会に及ぼした影響についていくつかの側面から取り上げたので大げさな題名になりました。興味がある部分だけでも読んでみてください。


1章 三河地方の金次郎像全調査
東三河の二宮金次郎像





豊橋市 豊川市 蒲郡市 新城市 田原市 北設楽郡
西三河の二宮金次郎像

岡崎市 碧南市 刈谷市 豊田市 安城市
西尾市 知立市 高浜市 みよし市 幸田市

2章 二宮金次郎像の成立
一、 二宮金次郎の図・像の歴史



二、 二宮金次郎像を建てた人々奉安殿と比較して
三、津田小学校と二宮金次郎

3章 二宮金次郎の社会学
一、 二宮金次郎はどういう人か



二、 二宮尊徳の評価の変遷
三、修身教育と二宮金次郎
四、報徳社の歴史と愛知県

おわりに

「金次郎像全調査」とは少し面はゆい。「日本にはどれくらい金次郎像があるのだろうか。」と思っても一人では調査できないから、サンプルとして一地域を徹底的に調べてやろうと考えました。三河地方にある像の場所、材質、大きさ、建立年、寄付者、エピソードなどについて調査しました。学校や公園など公的場所にある像の現状はほぼ網羅できましたが、建立年、寄付者については不明なものもかなりありました。(会社や個人宅にある像については、個人情報に配慮しつつ知りえた限りのものを参考品として載せました。)なんとか金次郎像についての基礎資料ができました。今後はこの本を読んでくれた人が地元の金次郎像に関心を持ち、より歴史が解明されるきっかけになったらいいなと思います。
二宮尊徳に関する本は多いが、その死後彼が残したものはどうなったかということを書いた本はほとんど見ない。無用の長物然と小学校に建つ金次郎像を見て、戦前は政治、経済、文化の上で大きな影響を持った人物が(その表れが圧倒的な数の金次郎像。)戦後はなぜか霧のように消えてしまった。現れるにも消えるにも原因があるはずなのに、学校では誰も教えてくれなかった。仕方がないので金次郎像の調査をしながら自分で考えた。それがこの本の後半部。先人の文献を切り貼りしたものだが、初の「後・尊徳史」になったのではないか。素人の考察なので誤りがあるかもしれない。ご批判を請います。
 集めた資料をこのまま埋もれさせたくないが、世間に見向きもされないものかも。と不安半分で春夏秋冬叢書を訪ねた。代表の味岡さんは「本にする価値はありますよ。」と背中を押してくれました。編集の宮田さんは原稿の編集作業だけでなく内容を読み込んだ後には私の考えに無かった新しいアイデアを提供していただいた。掲載する400枚近くの写真をその数倍のデータから特定していく作業などもあり、本物の編集者のすごさを感じた。おかげで希望以上の立派な本ができて大感謝。もちろん突然取材に訪問した私に時間を割いて案内や資料をさがしていただいた学校の先生や土地の方々、各地の情報を送っていただいた金次郎像研究者の名古屋の杉山さん、福山の平井さんなど多くの人のおかげでこの本は出来上がっている。また愛知報徳会理事の古橋さんには貴重な助言を頂いた。直接お話を伺えなかったが故高橋一司氏のガリ版冊子「二宮像をさぐる」が私の研究の原点だった。高橋氏なしにこの本はできなかった。最後になったが、お世話になったすべての方に篤くお礼申し上げます。